法律解説Q&A |子の引渡しの執行方法

質問1 元夫は私との間の子を連れて別居を始めました。私と元夫との離婚の際に子の監護権者を私とし、元夫に子の引渡しを命じる審判を得ています。しかし、元夫は「子どもが嫌がっている」と主張して、子の引渡しを拒んでいます。どうしたら良いでしょうか。

回答1 まず間接強制をします。
子の引渡しを実現させる方法は令和元年に改正がありました(令和2年4月1日施行)。これによると、まず間接強制をしなければならないとされています(民事執行法174条2項)。間接強制とは「~までに子を引き渡さなければ1日あたり1万円を支払え」との形で金銭の請求により間接的に子の引渡しを強制する方法です。
それに効果がない場合にのみ、執行官による子の引き渡しの実行(直接強制)が認められるとされています。 但し、執行官は相手に子どもを引き渡すように求めることはできても、子どもを威圧するようなことはできないとされています(民事執行法175条8項)。 質問の場合はまず間接強制の申立をすることとなります。



質問2 元夫は「子の引渡しをするまで1日1万円を支払え」という間接強制の申立に対して、「自分は応じる気持ちはあるが、子どもが嫌がっている」と反論しています。子どもを理由にしたこのような言い訳が通るのでしょうか。

回答2 事情によります。
上記の言い訳を簡単に認めてしまうと監護権者を定める意味がなくなってしまいます。しかし、現実に子が自分の意思でそのような行動を取る場合もあります。そこで子の意思確認が行われます。
子の意思が強固であり、それが子の自由意思に基づき、無理に引き離した場合には心身に重大な影響を及ぼすおそれがある場合には間接強制が権利の濫用となる場合もあります(最高裁平成31年4月26日決定)。
但し、子が引き渡し拒否の意思を強く持っていても、債務者(引渡し命令を受けた者)が子の説得などの期待される行為を行なうことが必要であるとする説も有力です。
設問の事例では、裁判所で子の意思を確認し、元夫からの説得などの状況を考慮に入れて、間接強制を認めるかどうかが決まります。間接強制を簡単に否定するわけにはいかないので、元夫は子の説得などの行為をかなりの回数行なっていることなどが必要とされます。


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