法律解説Q&A |年金分割とは?

質問 私は結婚後に主婦をしていましたが、下の子どもが大学を卒業したのを機に結婚して28年の夫と離婚しようと思います。年金分割という制度があるようですが、どのような制度なのでしょうか。どのように利用したらよいのでしょうか。

回答 年金分割は離婚した後に年金の受取額を分ける制度です。年金分割には合意分割と3号分割の2種類があります。あなたの場合は合意分割で結婚当初からの年金分割を主張した方が有利です。
なお、以下の説明は概要ですので、細かな部分は弁護士等の専門家に問い合わせてください。


  1. 年金分割の対象となる年金
    年金には①老齢基礎年金と②老齢厚生年金があります。このうち②の老齢厚生年金のみが年金分割の対象となります。
    ①老齢基礎年金は、国民年金の加入者が加入期間に応じた金額を受け取る基本的な年金です。これは年金分割の対象とはなりません。
    ②老齢厚生年金は、厚生年金の掛金と期間に応じて受け取る年金です。こちらが年金分割の対象となります。
  2. 2号加入者と3号加入者
    厚生年金や共済年金の加入者を、国民年金においては2号加入者といいます。2号加入者に扶養される配偶者を3号加入者といいます。2号、3号以外の加入者を1号加入者といいます。
  3. 合意分割と3号分割
    年金分割には2つの制度があります。①合意分割と②3号分割です。なお離婚から2年を過ぎたら分割請求できません。
    ①合意分割は分割することと割合について合意して分割するものです。但し、分割する割合には上限があります。
    ②3号分割は合意がなくとも3号加入者の一方的な請求で分割できる制度です。対象は平成20年4月1日以降の3号加入者であった期間の老齢厚生年金のみです。
  4. 合意分割と3号分割のどちらが有利か
    3号分割の分割対象は平成20年4月1日以降の老齢厚生年金のみですが、合意分割の対象はそれ以前の期間も含みます。従って、平成20年4月1日以前から結婚していて主婦をしていた場合は、分割対象が増えるので合意分割の方が妻に有利となります。但し、細かな例外もあります(共働きなど)。
  5. 夫が気をつけるべきこと
    平成20年4月以前からの結婚歴がある場合には、夫の側からみれば合意分割に応じずに、妻に3号分割の請求をしてもらった方が有利となります。気をつけるべきは、裁判所で調停が行われ、妻の申出で年金分割が行われたたときに「裁判所での分割だから3号分割であろう」と考えていたら、合意により調停が成立したので合意分割となっている場合もあることです。
    裁判所の調停では、調停委員も裁判官も合意分割と3号分割の違いを本人に説明する義務はありません。なので、「結婚当初からの長い期間の年金分割とした方が離婚後の妻のためになる」という考えから夫への説明をせずに、調停を成立させることも考えられます(地域によっては、これが普通になっているかもしれません)。夫としては、分割対象期間が平成20年4月1日以降のみであることを確認する必要があります。
  6. 3号分割と別居期間
    別居15年ののちに離婚して妻から3号分割の申入れがあった場合に、夫が別居期間を除外して分割するように申し入れた場合、どうなるでしょうか。実務では別居は考慮されずに、離婚成立までの期間が分割対象となります。
    上記のとおり、3号分割では平成20年4月1日以降が分割の対象となります。これは年金分割の制度が開始する前の期間まで遡って分割することはできないからです。しかし、主婦をしてきた妻の立場から見れば、結婚当初から分割するのが当然であるのに、制度開始時期が遅れたため分割されないのはおかしいということになります。実務で別居期間が全く考慮されないのは、このことと帳尻を合わせるためであると思います。


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