法律解説Q&A |遺産分割協議の合意解除

質問 父の遺産分割協議が成立して私は相続した土地に家を建てることとなったのですが、調べてみると私の土地だけでは車が出入りすることができないことが判明しました。そこで兄と協議して私が相続した土地の一部を隣接する兄が相続した土地の一部と交換することとなりました。
方法として、遺産分割に従って土地を分割したうえで土地を互いに贈与するのではなく、遺産分割をやり直して別の遺産分割協議を成立させたいのですが、可能でしょうか。

回答 可能です。遺産分割の合意解除の可否と言われる問題です。最高裁判例はこれを認めていて、学説も概ね認めています。


  1. 遺産分割協議の合意解除
    最高裁判例は遺産分割を合意解除することを認めています(最高裁平成2年9月7日判決)。学説もほぼ全てが合意解除を肯定しています。
    但し、この最高裁判決の前年に遺産分割の法定解除(債務不履行解除)を否定する判決(最高裁平成元年2月9日判決)が出ていることとの関連で議論となりました。平成元年の判決は①遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了するので、争う余地がない、②遡及効のある遺産分割をやり直すことは法的安定性を害する、という理由を述べました。その理由づけは、翌年の平成2年の判決と矛盾するのではないかという議論です。
    これに対しては、①については、法定解除と相続人全員が合意して以前の遺産分割を解消することとは次元の異なる問題であると言われています。平成元年判決は、相続財産のうち「あれをAさんに、これをBさんに…」という分け方を決めるのが遺産分割で、そもそも相続財産ではない親族の老後の世話をしなかった債務不履行が遺産分割には影響を与えないとする理屈です。それに対して、平成2年判決は相続財産の分け方そのものを全員の合意で変更しようとするものなので、相続財産が対象になっていて次元が異なる別問題であるという理屈です。
    次に、②については、対内的には相続人全員の合意があるから法的安定性に問題はなく、対外的には相続人の合意で第三者を不利に扱えないことから問題はないとするものです。対外的な効力については相続人全員が遺産分割をやり直しても、例えば相続財産である不動産を買い受けた人にはその不動産を返せとは主張できないのは当然のことなので、問題は生じないという理屈です。
    他にも細かな議論がありますが、両判例は矛盾しないということでおおむね意見の一致を見ています。


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