法律解説Q&A |保険金の受取人が死亡して、再指定されなかった場合

質問 先月、父が亡くなりました。父は母を受取人とする生命保険に加入していましたが、 母はすでに2年前に亡くなっています。父は母の死亡後も生命保険金の受取人を変更しないまま亡くなりました。父の相続人は私と弟の子ども3人の合計4人です。 弟はすでに亡くなっています。
この場合、保険金は誰がどのような割合で受け取るのでしょうか。

回答 生命保険金は各相続人が均等割合で受け取ることになります。


  1. 保険法46条
    生命保険について規定した保険法46条は、「保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる」とします。
    質問の事例では、この条文が適用されます。保険法46条は被保険者よりも先に受取人が死亡して、その受取人の再指定がなされないままその後に被保険者が亡くなった場合を想定しています。 この規定は、相続人がいかなる割合で保険金を取得するのかを定めていません。従って、民法の原則が適用されます。民法427条は分割債権、分割債務は均等割りになるとしています。以上から、質問の事例も各相続人が均等割合で保険金を取得することとなります。
    この解釈は、平成22年に保険法が施行される前の旧商法676条2項(保険法46条と同じ)についての最高裁判例(平成5年9月7日)で示されました。これに対して、保険法制定の際には民法427条の適用を制限して相続分に従うべきとする条文を付け加えるべきとの意見も出ましたが、その付け加えはなされませんでした。従って、民法427条が適用されます。
    相続分に従うべきとする説は、質問の事例で質問者と弟の子ども3人の取り分が1対3になって不合理との考え(弟が生きていたら1対1だったのに、との考え)と言えます。しかし、保険法46条が民法427条の適用を排除していない以上、相続人全員が均等割合で受け取ることとなります。


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