法律解説Q&A |被相続人の取引履歴の開示請求

質問 先月父が亡くなりました。被相続人(父)は生前は兄と一緒に暮らしていて、妹の私とは別世帯でした。 父の所有する不動産は実家の土地建物だけであるのは間違いないのですが、父の預金口座がどの銀行にあるのか、その金額も分かりません。 父は晩年は長く入院していたので、父が亡くなる数年前から兄が父の預金を引き出した可能性があります。こちらで父の預金口座を調べる方法はありますか。

回答 相続人であれば単独でも被相続人(父)名義の預金口座の取引履歴の開示請求はできます。依頼を受けた弁護士でも開示請求ができます。お仕事で忙しい場合や調べたい金融機関が多い場合には弁護士に依頼した方が良いと思います。


  1. 取引履歴の開示請求
    相続人が単独で被相続人の取引履歴の開示請求をできることは比較的最近の最高裁判決で示されました(最高裁平成21年1月22日)。
    その理屈は、①相続人により被相続人の財産は相続人全員の共有となる。②共有物の管理は持ち分価格の過半数で決める(民法252条)。 但し、共有物の保存行為は各共有者が単独でできる(民法252条但書)。③252条は数人で所有権以外の財産権を有する場合(準共有)にも適用される(民法264条)。④預貯金の取引履歴の開示は保存行為である。⑤よって、預貯金債権を準共有している相続人は取引履歴の開示請求をできる。という流れになります。
  2. 必要書類
    銀行等金融機関には、以下の書類を提示する必要があります。
    1. 被相続人の除籍謄本
    2. 請求する人の戸籍謄本
    3. 請求する人の印鑑証明書
  3. 弁護士会紹介による開示請求
    依頼を受けた弁護士が開示請求をする場合、弁護士が個人で依頼者の委任状のコピーを添えて開示請求するわけではありません。すべて弁護士会を通して開示請求します。
    弁護士会を通した開示請求は弁護士法23条の2(弁護士照会)によるものです。この制度による開示請求については限界もありますが、被相続人の預貯金債権の取引履歴の開示請求は全ての金融機関が応じています。


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