回答 詐害行為にはあたりません。 被相続人の債権者に対する詐害行為 被相続人が借金を抱えたまま亡くなったときに、その借金を相続しないための制度が相続放棄です。従って、相続放棄をしたことが詐害行為になるとしたならば、制度の存在意義がなくなります。 最高裁判所も相続放棄は被相続人の債権者に対する関係では詐害行為とはならないとしています(最高裁昭和49年9月20日判決)。 相続人の債権者との関係 では多額の借金を抱えているのが、被相続人ではなく相続人の場合はどうなるのでしょうか。相続人の債権者から見れば「普通に相続していれば相応の財産を取得したはずであるのに、相続放棄をしたのは詐害行為(債権者を害する行為)である」と言えます。この点について最高裁判例はありません。学説は詐害行為とはならないとする説が多数説です。 最高裁判例は上記1の事例ですが、2の事例では詐害行為となるとする説(二宮『家族法・5版』342頁)もあります。 遺産分割は詐害行為となるか 最高裁判決は遺産分割が詐害行為となる事を認めています(最高裁平成11年6月11日判決)。 なお、この最高裁判決は原審が「相続放棄しなかったので遺産共有となった」(相続放棄をすれば取り消せなかった)との理屈を述べていた部分を採用していないので、相続放棄の詐害行為取消に含みを持たせたとも言えます。一方で相続放棄をするかどうかで相続人となるかどうかが決まる(民法939条)とする民法の定めからは、相続人とはならなかった人の取り分を論じる余地はないとも言えます。